2024パリオリンピック・ボクシング女子66㎏級でイタリアのアンジェラ・カリニ選手と対戦したイマネ・ケリフ選手。
アンジェラ・カリニ選手が試合開始後わずか46秒で棄権したことで、イマネ・ケリフ選手の染色体の問題が話題になっています。
よく報道やSNSで「XY染色体を持っている」と言われていますよね。
通常XY染色体を持っていると、「男性」ということになりますが、イマネ・ケリフ選手は「女子」としてオリンピックに出場。
彼女は、性分化疾患という身体的特徴を持っています。
性分化疾患のある選手をめぐって、競技が性別で決められているスポーツ界に大きな影響を与えています。
今回は、イマネ・ケリフ選手の性別がどのように判断されているのか、スポーツ界で性分化疾患をもつ選手の参加資格をどのように決めているのかを調べていきたいと思います。
イマネ・ケリフ選手の性別はどっち?
- 名前 إيمان خليف (公式ラテン文字表記:Imane Khelif・イマネ・ケリフ)
- 国籍 アルジェリア
- 出身地 アルジェリア・ティアレット県
- 身長 178㎝
2018年 AIBA女子世界ボクシング選手権 1回戦で敗退 17位
2019年 AIBA女子世界ボクシング選手権 1回戦で敗退 33位
2020年 東京オリンピック女子ライト級 準々決勝で敗退
2022年 IBA女子世界ボクシング選手権 決勝進出 準優勝
地中海大会、アフリカアマチュアボクシング選手権 金メダル
ボクシング競技を始めたころから「女子」として試合に出場しています。
オリンピック初出場は、東京オリンピックだったのですね。
東京オリンピックでも「女子」として参加していますね。
2023年5月、IBA女子世界ボクシング選手権で決勝進出。
しかし、決勝直前に失格となります。
失格の理由は、テストステロン値が高かったから
その後国際ボクシング協会(IBA)が、イマネ・クリフ選手について、
DNA検査によって、XY染色体を持つことが証明された
と発表しています。
これまでの経過をみると、イマネ・ケリフ選手は2023年に初めてDNA検査で「XY染色体を持っている」と確認されました。
それまでは、特に問題視されていません。
ということは、見た目的には「女性」だったのでしょうか。
見た目が女性で、「XY染色体をもつ」場合は、医学的に染色体異常が考えられます。
「XY染色体をもつ」場合の性別は?
みなさん、染色体について学校で勉強したことを覚えていますか?
人間の染色体は、通常46個あって、2個1対の常染色体が22対と性染色体(XXの対か、XとY染色体)です。
性染色体がXXの時は「女性」、XYの時は、「男性」
ただ、時々Xが1個とか、XYにXがもう1個あった、とかXが3個あった!とか、X3個にYが1個あった!という場合がまれにみられるのです。
そして医学的には、Y染色体があれば「男性」としているのです。
この染色体異常をもつ状態を、医学用語では「クラインフェルター症候群(47,XXY)」と言っています。
クラインフェルター症候群は,2つ以上のX染色体に加えて1つのY染色体が存在する異常であり,表現型は男性となる。診断は臨床所見に基づき,細胞遺伝学的分析で確定する。治療にはテストステロンの補充を含めることがある。
引用:MDSマニュアル
外見の特徴ですが、
- 背が高く、手足が不自然に長い
- 精巣は小さい
- 約30%で女性化乳房がある
もうひとつ「XY」染色体で「XYY」という場合があります。
こちらは、医学用語で「47,XYY症候群」といいます。
47,XYY症候群は,Y染色体2つとX染色体1つが存在する異常であり,表現型は男性となる。
引用:MDSマニュアル
こちらは、身体的な問題はほとんどありません。高身長と、若干IQ低下があります。
イマネ・ケリフ選手がDNA検査を受ける前から女子ボクシングの大会に出ていたということは、外見上女性に見えるということだと思います。
なので、もし染色体異常であればイマネ・ケリフ選手は、クラインフェルター症候群である可能性が高いと思われjます。
性分化疾患とは?
性染色体異常ではなくても、様々な影響で性別が分かりにくくなる場合があります。
それらをまとめて、性分化疾患と呼んでいます。
- 性染色体異常
- 精巣形成障害(性染色体異常以外の遺伝疾患)
- 性ホルモン産生障害
- 性ホルモン効果障害
おもに性染色体異常が原因の場合が多いです。
ほかの遺伝疾患で性ホルモンの生産量が過剰だったり少なかったり、性ホルモンを受け取る部位が正しく機能しないという場合もあります。
ちなみにトランスジェンダーは、性染色体異常などの性分化疾患ではありません。
性分化疾患を持つスポーツ選手の参加資格はどうやって決める?
IOCのトランスジェンダーやインターセックス選手の参加に関するガイドラインを2015年に制定しています。
競技参加の是非は、男性ホルモンであるテストステロン値によって判断される
国際オリンピック委員会(IOC)は、イマネ・ケリフ選手の女子ボクシンングへの出場参加を認めています。
すべての定められた医療規程を遵守している
選手の性別と年齢はパスポートに基づいて決定される(IOC)
しかし、国際ボクシング協会(IBA)は「資格規定を満たしていない」と失格にしています。
IBAの資格規定について調べましたが、ネット上では見つけられませんでした。
ほかの競技ですが、世界陸連(ワールドアスレチック)では、トランスジェンダー選手の出場資格として、1年間テストステロン値を5nmol/L以下に抑えれば女子カテゴリーでの出場を許可しています。
IOCのガイドラインや、世界陸連の規定を考えると、イマネ・ケリフ選手はテストステロン値に問題がなかったと判断した、ということになりますね。
ほかの競技でのトランスジェンダーや、性分化疾患を持つ選手の出場資格についても調べてみました。
プロ競技へのトランスジェンダー女性の参加を推奨しない。(2020年10月 ワールドラグビー)
トランスジェンダー女性の国際試合への出場を一時的に禁止(2022年6月 国際ラグビーリーグ)
(多様な選手の受け入れについて調査・研究を進める間の暫定的措置)
トランスジェンダー女参加の条件「男性として思春期を迎えていない」「12歳までに女性に性別変更している」
(2022年6月 国際水泳連盟)
性分化疾患はスポーツ競技に不利?
各競技のトランスジェンダーや性分化疾患選手の出場資格をみてみると、おもにトランスジェンダーは参加資格が厳しいです。
性分化疾患は、性別で出場資格が問われるとアウトの可能性がありますが、対応はトランスジェンダーに準ずると思われます。
ただし、どちらにせよ男女別の競技に参加するには、以下の問題がつきまといます。
外見の問題
国際水泳連盟の見解をみてみると、「思春期を迎えるまでに性別の外見的特徴が男性にならない」ことがトランスジェンダー女子としての条件になっています。
外見的特徴が、参加する競技の性別にあっていないと参加は難しいということですね。
イマネ・ケリフ選手は、2023年までは女子として参加資格を得てきたので、外見上女性の特徴が出ていたと思います。
身体能力的問題
各スポーツ競技で一番の問題となっているのが、「トランスジェンダー女子」でした。
男性が、女性に性別変更している場合ですね。
性別変更していても、単純に身体能力は男性のままなので競技に有利となってしまう懸念があります。
イマネ・ケリフ選手は、トランスジェンダーではなく性分化障害ですが、性別的には男性です。
身体能力的にも男性の特徴が強く出ていたのだと思います。
競技の公平さを考えると、トランスジェンダーや性分化疾患を持っている選手は、種目によっては参加が難しいケースが多くなると思います。
まとめ
今回は、イマネ・ケリフ選手の性別がどっちなのか、性分化疾患の選手はスポーツ競技に不利なのかを調べていきました。
まとめると
イマネ・ケリフ選手は、医学的には「男性」
性分化疾患のスポーツ選手に対する参加資格が各競技で統一されておらず、指標もまちまちであるため、種目によっては参加に不利なケースが多い
最近は、男女混合の競技種目も多くなってきています。
男女平等を考えるときに、スポーツ競技での性別種目を今後どうしていくかを検討していく必要がありそうですね。
最後までご覧いただきありがとうございました!
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